ウェブデザイン不要論

過去に何度か似たようなことを書きましたが、「ウェブデザイン不要論」です。
あくまで個人的な意見なのですが、ウェブデザイン、ウェブデザイナーという分野・職業は近い将来消滅すると考えています。大きくは、2つの理由があります。


1.閲覧者はコンテンツを見てるだけで、「ウェブのデザイン」なんて見ていない
ウェブサイトというのは不思議なもので、閲覧する側と制作する側とで感覚がズレています。
例えば、あなたが旅行に行きたいと思い立ち、検索サイトで「熱海 旅館」なんてキーワードを検索したとします。
この時、探している条件が「一泊10,000円まででオーシャンビューの部屋」だとしたら、あなたは開いたサイトでまずは「一泊の料金」と「オーシャンビュー」というキーワード、それにバルコニーからの写真なんかを探しているはずです。
つまり、この時ウェブサイトには、まず第一に写真やテキストなどの充実したコンテンツが求められます。
そして、そこにたどり着くために、検索のしやすさ、ページ内の回遊性、それに整理されたナビゲーション、といったものが求められます。
一方で、熱海の旅館からウェブサイト制作を受注した制作者は大抵、「旅館の雰囲気の伝わるデザイン」や「高級感の演出」といったあたりに腐心し、そこに一番時間をかけます。そうなる理由の多くは、発注者の意図を最大限汲んでいるためです。
その結果、FLASHのスプラッシュから始まるような、重厚なウェブサイトが完成します。
旅館のオーナーは満足するかもしれませんが、このようなプロセスで完成したウェブサイトは、閲覧者に求められるものから離れてしまいがちです。
それでもなぜ、制作側がこういった問題点を指摘しないのか・・・
これは邪推ですが、閲覧者が求めている条件は、こんにちではCMSの導入等、広く使われているツール等でほとんど解決可能だからではないでしょうか。
つまり、ここで必要とされるのは、CMSの設置と設定を行える作業者であり、デザイナーではありません。
たとえ制作者がそのことをわかっていても、
「デザインの高級感なんて必要ありませんよ」
とは、口が裂けても言えないのは、それが自己否定につながりかねない危険な提案だからです。


2.効率化・
省作業化が仕事の自動化を推し進める
どの分野でも同じことが言えますが、企業が行う以上、ウェブ制作も当然効率化が図られます。
ノウハウの共有から始まって、画面内の各部品の共通化とCSSやスクリプトの汎用化、更に流れ作業化を進めていくに従い、個人の能力に依存する度合いは減っていきます。
結果、機械的な作業が増え、誰でもできるようになってきたら、経営者としては
「こんなことのためにわざわざ高給で社員を抱えるのはリスキーだな」
と考えるのが普通でしょう。
実際に画像を作成するのはロゴまわりと中央のメインイメージ程度で、あとはアルバイトのコーディングでほぼ完成、FLASH(JS)も定型のものを活用、というようになれば、効率は良いですが、デザイナー育成などは行うべくもありません。
この形態に一番近いのは、工場です。いずれ、本物の工場同様、今は人がやっている作業も、無人化が進むでしょう。そうなると、ますます業界全体で雇用できるウェブデザイナーの数は限られていきます。
これが製造業でいうところの旋盤工のような職人であれば、高い技術力で機械による代替ができない職業的価値を守ることもできるのでしょうが、最初からアドビ社製品にドップリ浸かっているウェブデザイナーには、そのような居場所はありません。人工的な環境に飼いならされ過ぎているというのも、大きな問題でしょう。


では、ウェブデザイナーはどうなるのか?
いくつか道はあると思いますが、@designmap_info氏が触れている通り、「UXデザイナー」というかたちになるのが、一番前向きな結論かと思われます。

「ウェブデザイナーは一生続けられる仕事ですか?」を、もう一度、根本から考える
http://www.designmap.info/tobewebdesigner/after_webdesigner/beingwebdesigner/

ユーザー体験のデザイン、という分野は、人の振る舞いやインタフェースについての深い知識と造詣が必要とされますので、「アルバイトに代わってもらう」ことは出来ません。iPhoneアプリ開発やウェブアプリケーション開発においては、今後必須の人材となるのではないでしょうか。
しかし、UXデザインにはそうした座学の知識に加え、実務に必要なものとしてJSやPHPのようなクライアントサイド・サーバサイドのスクリプト言語を最低限ひとつずつは習得しないといけないですし、MySQLに代表されるDBの知識も必要になってきます。
加えて、アドビ系ツールによる画像作成の頻度はウェブデザイナーに比べかなり下がるでしょうから、作業スキームが大きく変化することになります。失礼ながら、現在現役でウェブデザイナーをしている方全員が簡単に転身できるとは思えません。


まとめると、
・ウェブのデザインが気になるのは発信する側だけ。かけた時間が報われるほどには、見られていない。
・求められるデザインのほとんどはテンプレートデザインとCMS導入・設定で解決可能 = 誰でもできる作業にわざわざ専門家を雇う必要性が薄い

といったところでしょうか。
もちろん、自分もウェブデザインをかじっている人間なので、自戒を込めて。

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